「桜!?」
寝てたらしい。上半身裸でベッドに起き上がってる。ビックリ顔の太陽を無視して部屋に押し入ると後ろ手に鍵を閉めた。
-ドンドンドンドン!-
今度はさっき私が叩いたより凄い音でドアが叩かれる。
「桜!桜ごめん!」
「知らない知らないっ!元兄ィなんか大っ嫌い!」
もう怒りと悲しみで訳分かんない。まだ状況を飲み込めていない太陽目掛けてダイブした。
「おい桜なんで泣いてんの?何があった?」
「ううっ……もうやだ~……ひっ…く…元兄ィあの女の…人…とええっ…浮気ぃ………」
泣きながらうまく喋れない桜の言葉からなんとなく悟ったのか、黙ってベッドから立ち上がると太陽はスポーツタオルを桜に投げ渡す。
そのまま鍵を開けてドアの外に出るとパタンと閉めて何か元気と話し出した。
「…なんで桜……だよ!」
「だから………」
「ヤダね……俺本気で……」
「……誤解…とにかく……」
戸の外の会話は途切れ途切れにしか聞こえない。
-バン!-
「ったくあのバカ兄貴………取りあえず追っ払っておいた……ぞ。っておい」
部屋に入って来た太陽の胸に勢いよく飛び付く。まだ服を着ていないのに、何の抵抗もなかった。とにかく泣きたい。
筋肉質だけど、あちこち傷だらけの太陽の胸はあたたかかった。
「俺の事警戒してたんじゃなかったのかよ。そんな無防備に…」
「……っ~。私だってヤダよぅ。なんで太陽なんか……でも……ヒック……元兄ィがあの女性(ひと)と何かあるのはもっとヤダぁ!」
一瞬で血の気が引くのが分かった。フウッと体の力が抜ける。
-あ、また……-
貧血。目の前が真っ暗になる。遠のく意識の中フワッと抱き締められるのがわかった。そして何故か唇に感じる柔らかい感触。
-元兄ィ……?-