ラブハンター☆

するっと腕を離すと作り笑顔を張り付け、軽く手を振り元気を残してその場を後にした。

-う~涙出そう……-

潤んでくる瞳から涙がこぼれないように空を見上げて深呼吸する。

-まだダメ。もっと振り向いてくれなきゃ絶対『妹』で終わっちゃう…-


わがままはなんでも聞いてくれる。顔を近付けたって肌を密着させたって動揺するどころか顔色一つ変えない。どの位歩いてただろうか…。


「彼~女♪可愛いじゃん。一人?俺らと遊ぼうよ♪」


-は~っ、人が真剣に悩んでる時に…-


ナンパだ。桜はよくあちこちで声を掛けられる。毎回拒否るのが普通だけど、友達達といる時はカラオケ位行ったりしている。今日は一人だしそんな気分じゃない。でも相手は三人。シカト決め込んで早足で歩き去ろうとした。

「お~い。シカトしないでよ。一人は寂しいじゃん?」

-一人は寂しい…-

痛いキーワードに思わず足が止まる。

「ねっ、俺等が楽しい事教えてあげるからさ♪まずカラオケ行こっ、カラオケ」
「ちょっ、止めてよ!…」

肩を抱き寄せられる。思いっきり抵抗してもやっぱり男の力には勝てない。悔しい…。

「もしもし?悪いけどさぁ、触らないでくれる?」


背後から聞き覚えがある声。香水の香り。桜は誰だか直感した。手が伸びてきて肩を抱いていた男の腕を掴む。

「あ?なんだお前。邪魔すんなや!」
「お前等こそ何?人の女に手ぇ出してタダで済むと思ってんの?」
-は?私はいつからあんたの女になったのさ…-

男の腕から開放され、今度は声の主に抱き寄せられる。見上げると……やっぱり。


「太陽……」


金髪頭に元気によく似た顔が見下ろしている。

「てめぇ、横取りする気かよ!」

1人の男が太陽の胸ぐらを掴む。ヤバい!

「危ない!」
「女に心配されてんぞ、このヘタレ………ぐはっ」

バカにした笑いを浮かべてよそ見したところへ太陽の拳が見事に腹部に決まる。

-太陽じゃなくてあんたらの心配だよ…-


太陽は喧嘩がめっぽう強い。中高とかなり有名だった。この前は酔ってたし不意を突かれて元気の蹴りを受けたけど、シラフなら元気も敵わないだろう。