“森田由佳様”


“小川種季”


封筒に書かれた彼の整った文字を見るだけで、
胸がつまる思いがする。


「この手紙さ、絶対10年後まで読むなよ?まじ恥ずかしいから。」


そう言って彼は私に手紙を渡してくれたのを、今でも鮮明に覚えている。


彼は今...
私の知らない、遠いところに。


会えないところに。


そんな場所にいる彼の手紙を、
読む事なんてできなかった。


手紙は大切にある本の間に挟んでおいた。


シェイクスピアの、ハムレット。


彼が好きだった本。