『ねぇ♪俺と付き合って♪』


瞳の前に立つ男…は、

たれ目がちな瞳でにこりとほほ笑み突如こう言った。


ここは教室。

お昼時。


あたしはフォークに刺した卵焼きを口に入れたまま固まる。


『無理?』


次にそう続ける男の言葉の意味が分からなくて…

ただヘコっと首を傾げた。


一緒にお弁当中の芽奈(メナ)も唖然。

教室はシン…と静まり返っていた…




落ち着こう…

落ち着いて考えてみよう…


あたしは、今あり得ない状況であれ【告白】をされているんではないだろうか…?


しかし…

瞳の前の男は…

誰っていうか…

こいつは…


『はれ…?』


おっと…口に入った卵焼きのせいで上手く喋れない…

あたしはにこにこ佇む男を見つめながら卵焼きをモグモグ飲み込んだ。

そして


『誰?』


さっきの言葉を繰り返す。


『俺?藤堂 響♪俺の事知らないの?』


恰も「世間が自分の事を知っているのは当たり前」と言うように平然と言う。

そしてわざとらしくちょっと可愛らしい顔でしょんぼりしている…



だけど、その言葉の通り…


藤堂 響 とうどう ひびき

あたしたちと同学年、はじっこのクラスの7組。

学年、いや…学校中、彼を知らない人はいないだろう…

カッコイイけど遊び人、なのに頭が良いって言う話で有名な超美形の男の子である。


『知ってますが…』


だからこそ、意味が分からないんじゃないか…


『だから、俺と付き合ってよ♪』

ヒョウヒョウと藤堂響は続ける。


『えーっと…付き合う…とは、先生に呼び出しでもしれましたか…?それに付き添え…とか言う話ですか?』


努めて冷静に返そうと答えた。


『ちがう、俺の彼女になって♪』


はい…?

彼は、「ドラマ録画しといて♪」とお願いするみたいに言って退けた(分かりにくい)


『はぁ…?』


あたしはため息を吐いてお弁当を片付け…