しかし、歩けばついてくる。どうにも彼らはあきらめない。
 100mほど歩いたところで、今度は紳士的に彼らを説得する策に出る。

 「私はあなたに私のポケットの中のものを見せるつもりは毛頭ありません。そもそも異常な挙動その他周囲の事情からして、さらには、私のポケットの中にあるものをあなたに提出すること、との合理的な関連性に照らして私が犯罪に関係あると判断できる理由はなに一つないじゃないですか。そもそも警察官職務執行法には、『身体を拘束され、又はその意に反して警察署などに連行され、若しくは答弁を強要されることはない』とあって、このような形で身体検査を強要されることはない筈です。」

 と問えば、彼らの一人がこう答えた。


「あやしいものがないのであれば、見せない理由がないではないですか。ならばあなたは怪しい。我々があやしいと考えたときに、あなたは誠実に自分が不信な人間ではないと言うことを立証する責任があるはずです。」