「だってさ、女とかめんどいじゃん?だから偽名使って入学してみた。」


ぽかーんとする私なんて安井くんは気にしてないみたいで、さらに話を続ける。


「で俺ってバレないように、眼鏡して前髪で顔隠して、暗い男演じてたわけ!」


「…ということは、私って、いつも安井くんの隣に座って授業受けてるんですか?」


なんだか現実味がなさすぎて、自分でもびっくりするほど冷静だった。


「うん。俺が隣にいるのも知らないで、ずっと俺の話してるからさぁ。笑いを堪えるのに大変だったんだよー?(笑)」


待った、結菜よく考えろ。


私、隣が大郷くんなのを良いことに、授業中女捨ててたよね?


あくびとか毎日してるよね?


居眠りも毎日してるよね?


妄想してニヤニヤしたりもしちゃったりしてるよね?


全部見られてた?


「てかお前、学校で素出し過ぎだと思うけど。」


「…と言いますと?」


「あくびしたり居眠りしたりニヤニヤしたり」


神様、時間を戻してください。


私、今度こそきっと、大郷くんの隣の"可愛らしい女の子"になってみせますからっ!