「今、普通の車じゃん。…とか思ったでしょ?結菜ちゃん。」
「え、あ、正直……って!なんで私の名前知ってるんですかっ」
「…いじめ?結菜ちゃんってそういう趣味あったの?」
「いや、いやいやいやいや。いじめるだなんてそんな」
「じゃあ同じクラスのやつの顔くらい覚えてあげなよ、安井結菜ちゃんっ」
「はい?」
私はやっぱり夢なんじゃないかと頬をつねってみたけど、それは痛くて。
夢がこんなに鮮明なわけもなくて。
けど私が話してるのは、あの大好きな安井くんで。
しかも安井くんが言うにはクラスメイト?
だって安井くんがクラスにいて気付かないわけないし、女の子達だって放っておかないはず。
「ま、俺いつも暗いしねー。しらなくても当たり前っちゃ当たり前かも。」
「…暗い?安井くんが?」
「そっ。知らない?大郷彼方っていう暗ーい病弱なやつ。」
大郷くん大郷くん大郷くん…
「知ってるといえば知ってる…というか今隣の席の男の子ですけど」
安井くんはいきなり爆笑し始めた。
「あのね、それ俺だからっ」
