「ねぇ、お姉さん・・・俺を飼ってみない?」

何?この男・・・今、何て言った?
くるりと男のほうに振り向く。


『ん?もう一回言ってもらえる?』
「だーかーら、俺を飼わないかって聞いてんの」
『何なの?アンタは犬か何か?』
「ま、何でもいいけど・・・。飼い主、探してるんだよね」
『だからって何で私がアンタの飼い主にならないといけないのよ』
「嫌なの?」
『嫌も何もっ』
「ダメ、なんだね・・・」

次は少し寂しそうな顔をし始める。
そんな顔されたら・・・困るじゃない!

よくよく見れば整った顔、そして何故か懐かしさを感じられた。
何で懐かしさなんて感じるのだろう?

『ねぇ、アンタ・・・私にどこかであったことある?』
「いいや、全然」

アッサリとそう答えられる。
じゃあ何でこんな気持ちになるの?

『アンタ、名前は?』
「え・・・石川翔太だけど?」

そう言われたとたん固まる私の体

石川・・・翔太?

「何?俺の名前がそんなに珍しい?」
『いいえ、そうじゃ、ないけど・・・』

もしかしたら彼は・・・・

『いいわ、飼ってあげる』

次の瞬間、私はそう言っていた。
別に深い意味はない。
気まぐれ・・・そう、気まぐれよ。
自分にそう言い聞かせる。

「まじで?ありがとう」
『でも躾は厳しいわよ?』
「上等、でも俺だって噛みついちゃうかもよ?」
『やれるもんならやってみなさいな』

こうして私と翔太の不思議な同居が始まった。

「ねぇ、お姉さん名前は?」
『ハルって呼んでちょうだい』
「それ、本名?」
『どう思う?』
「ま、別に良いけど」