海上船内物語




(誰かが入ってきた・・・、誰だ?ウル、じゃない・・・と言うか何で何も喋らないんだ?)


すると、カイルの手首に何かが触れた。


「・・・・・・・・・枷・・・・・・」


何処か馬鹿にしているような声色で、カイルの枷に触れた、冷たい“手”。


(声は知らない男の声・・・、腰に銃と剣があるか・・・、くっそ手さえ自由になれば・・・!)

どくどくと心臓を高鳴らせながら、カイルは必死に頭を回転させた。


と、突然その冷たい“手”はカイルの背中をとん、と指す。



「俺は手前ぇの正体を知ってるぜ」

「っいぎっ・・・・・・・・・・・・!!!」


そのまま“手”はぐい、と背中にのめり込み、背骨に激痛を走らせた。



「・・・やっぱり狸寝入りこいてたな、お前」

「くっそ・・・・、誰だ!お前!!」


バタン。
隠し扉が閉まる音がする。



「・・・・・・きっと、お前にはわかんねぇよ」

「はぁ?!敵か味方かって聞いてんだ!」

「敵か味方か?」


ぷっ、と後ろで笑い声が洩れる。



「どっちだろうかはお前次第だな」

「・・・・・・は?」


そして、“手”はカイルのコートを捲くった。



「お前の“秘密”を知ってるって言ったろ?」

「まさか、お前・・・・・・、」


小さい部屋に、カイルの声にならない悲鳴が響いた。