「家族も、友人も、仲間も全て殺られた船長は、きっと死神船の中で一番“海賊”と言う存在を憎んでいると思う」


ウルの短髪が風で揺れる。


「そこで、隣町まで逃げて助けてもらったのが、ガルフだったんだ。ガルフは昔から優しかったんだよ。傷だらけの船長を直ぐに可愛がったんだって」


ウルの目が楽しそうに笑う。



「剣も全てあの人に教えてもらった。船長が尊敬している人間はきっと、あの人だけなんじゃねぇかな」

「アキが尊敬するなんて、柄に合わない」

「だろ?そんくらい強くて、優しかった人なんだよ」


俺も大好きだったなー、とウルは空を見上げながら言った。


そして、また表情が険しくなる。



「死神船として、船員が集まった頃。ガルフは殺されたんだ、海賊に」


一際大きい風が、二人の間をすり抜ける。
カイルの心臓がまた高鳴った。



「ガルフはまだ未熟だった俺らを庇って、殺されたんだ」


がん、とウルの堅く握った拳が鉄柵に叩きつけられる。
びくりとカイルの肩が跳ね上がった。



「俺らの未熟さを改めて実感した。だから、俺らは経験に経験を重ねて、今の“死神船”がある」


「・・・・・・・・・・・・・・・、」


「けど、ガルフは戻ってこない」



鉄柵から背中を離すウル。

哀しげな目でカイルに笑って見せた。