海上船内物語



「ガルフを殺したのは、カイルだ」


ウルは立ち上がった。


「そんな?!だってあそこの部屋には・・・・!」

「あれは、アランが娘を思って書いたでたらめだ」


ウルはアキに視線を移す。

アキはゆっくり振り向いた。


「じゃあ、俺らが追ってた“女神”って・・・」

「カイルのことだったらしいな」

「そんな、証拠は?!」


あー、とアキは視線を泳がせた。

ウルはアキの肩を揺する。


「・・・・・・・・背中に、傷があった」


険しかったウルの顔は、一瞬にして崩れた。

胡散臭い目でアキを見つめ、はぁと溜め息をつく。


「あーあー、船長もやっぱり下心はあるんだ」

「下心じゃない!何だその目は!」

「誰よりも早く“女神”の素肌を拝んだものなー」

「ウル!そんな目で俺を見るな!」


もう一度、ウルは溜め息をついた。


「・・・・・・・カイルが、ガルフを・・・・」

「お前は、どうする?」

「何をですか?」


ウルはアキを見上げた。


「・・・・・・このことを、皆にも言うべきだろうか」

「・・・・・・・・・・」


潮風が、吹いた。