海上船内物語



ザバァ。

ウルの足元に、勢いよく真水が流れる。


「いっ?!船長?!」


アキは樽の中いっぱいに入ってた真水を、その格好のまま浴びていた。


「船長?!どうしたんですか、寝惚けてでもいるんですか?」


アキは濡れた髪をかきあげながら、ウルの方を振り返った。


「・・・・・・・ウル」

「・・・・はい」

「寝惚けてなどいない、が、殴ってはくれないか」

「はぁあああ?!せんちょおお?!」


ぶる、とアキは頭を横に振った。

ウルに水が飛ぶ。


「どどどどうしたんですか?!やっぱりどこか調子が悪いんじゃ・・・」

「やっぱり、調子でも悪いのか?俺は」

「うわああああ?!本当に大丈夫ですか?何があったんですか?!」


アキはウルを静かに見下ろした。

そして、口を開く。


「やっぱり俺を殴「いやいやいや船長!」


ウルがアキの姿を見回す。

濡れているというところを除けば、どこもおかしい様子はない。


「・・・・え、じゃあ殴っていいんですか?」

「あぁ、殴れ」


ウルは拳をつくる。

日頃の鬱憤が船長に激突して、死んでもらってもいやだな、そう考えが過ぎった。