「・・・・・・・ようやく顔を見せたな、今日は一度もまともに顔を合わせてないぞ」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・」


アキは後に困り、伸びた黒髪をかき上げながら、カイルを見下ろした。


「・・・・・・これで、満足なの」

「は?」

「私が一番触れて欲しくないところに顔つっこんで、満足なの」


鼻をすすりながら、カイルはアキを睨みあげる。


「私が男だったら、こんな傷の存在なんて、全然気にしないよ、多分。

だけど、私この傷に嫌な思い出しかないの」

「いやな思い出?」


頬を濡らす涙を拭いながら、カイルは半ばやけくそ気味に続けた。


「・・・・まだ、私が剣振り回して調子に乗ってた時。油断して、後ろを取られたの。
そのとき人目がつくところでやられて、それだけでも屈辱だった。

だけど、そんな小さいことで気になんかしない。それからだった。」


アキは不可解そうに首を傾げる。


「・・・・・アランに外出禁止を食らってから、一度、見張りを殺して外に出たことがあったの。とにかく、あそこから逃げたくて、逃げたの」


ひっく、としゃくりながらカイルは言った。


「娼婦にでも、なんでもなってやろうと思った。だけど、傷物だと、商品にならないって」

「商品?」

「だって、今の時代身寄りがいない女なんて、売春しか仕事がないよ。それでもいいから、逃げてやろうと思ってたの。だけど、傷のせいで、そんな事すらもできないんだよ」


悔しい、とカイルは拳を叩きつけた。

ぎしりとベッドが軋む。