海上船内物語




「・・・・・・・・・・・・・カイル、」


部屋は急に静かになった。


聞こえるのは、見るな、を連発したくぐもった声だけだった。


蝋燭の赤い灯火が、カイルの真っ白な肌を焼きつくように照らす。


「見るな、見るな、見るな、見るな!!!!見ないでよ!!」


ひっく、と嗚咽が漏れ始める。

アキは動かないままだった。


「これは・・・・・・・・・」


えずきはじめたカイルの肩が、震える。

アキの指先が、背中に触れた。


カイルの背中の大部分は、斜めに切り裂かれた傷痕しかなかった。

真っ白な肌に、赤黒く変色した傷跡はあまりにも浮き出ていて、綺麗なものではない。


皮膚と皮膚が突っ張り、今にも傷が破れるんじゃないか、と言うくらい生々しい傷だった。


アキは何も言う事ができず、溜め息をつき、疲れた様子でカイルの頭の横に、項垂れた。

漏れる嗚咽が部屋をこだまするように感じる。


「・・・・・・カイル、」

「うるさい、」

「カイル」

「うるさい」


アキは、急にカイルの体を持ち上げた。

不意をつかれたカイルは、一瞬だけ泣き止む。