海上船内物語



「俺だって、ガルフはアランじゃない人間が殺したんじゃないか、薄々そう思ってた。

市場で、色々情報を集めたんだ。ガルフが殺された、あの日からずっと。

今この船も、ある“人物”を探して動いている。」


「人物・・・・・・・・?」


アキはカイルの髪を手に取る。


「皆、口を揃えて言う。

こんな伝説があるのを知ってるか?“女神”は天候をも変える力を持っているらしい。

“女神”は突然海に現れるらしい。

“女神”は死神船と因縁があるらしい。
とな」

「女神・・・・・・?」

「ずっと、調べていた。どんな奴に聞いても、皆二言目には“女神”なんだ。


長い金髪で、白い肌、蒼い目をした女。

それが、“女神”らしいぞ」


アキは手に取ったカイルの金髪を握りつぶした。


「俺と初めて会ったとき、お前は男として現れた。だから、まず“女神”の存在は否定したんだ。
なるほどな、こんな近くに居たとは気付かなかった」


髪から手を離すと、アキはカイルを見下ろした。


「・・・“女神”、なんて知らない!私はそんな名前じゃないし、金髪の蒼目なんて、私意外にも山ほど居る!

ガルフを殺したのはたしかに私だけど・・・・・・・、
“女神”は私じゃない!」


カイルは慌てて言葉を捲し立てた。

アキの顔はどんどん険しくなっていった。