海上船内物語



「今まで見たことが無い、笑顔だった。優しく頭を撫でてくれたり、目線を合わせてくれたり、ゆっくり話しかけてくれた。

なんで、って思ったの。


こんな人間、今まで会ったことなかった。


私を避けないで、汚物を見るような目じゃない。しっかり目を合わせてくれるんだ。


怖かった。自分の箍が外れるのが。

気付いたら剣を振り上げてて、血がべっとりついてたの」


カイルは床に視線を落としながら、震える体を押さえた。

アキと目が合わないように、最後を語るように、口を開く。



「子供の剣なんて避けれるか、って。寂しそうな顔してるよ、って。

そういわれた。

いつでも避けれた剣を、男は避けなかったんだ」


カイルは顔を上げた。

アキは無表情だった。


「っ・・・・・・・・・・・・・・、」


アキは力任せにカイルの体を押すと、近くにあったベッドに、カイルの体が打ち付けられる。

硬い木のベッドに、思い切り体をぶつけたカイルは声を漏らした。


「・・・・・・そうだ、何故気付かなかったんだ」

「・・・・・え・・・?」


アキがゆっくり近付く。

カイルは視線だけをアキに向け、表情は崩さなかった。