「・・・・・・・今は全部思い出してる。
遠くで、ずっと遠くの港で、アキとシーザとガルフが居たのを覚えてる。
私、その時からいっぱい人を手にかけてて、それしかする事がなくて、ずっと剣しか振り回してなかった。ちょっと気に食わないことがあったら、みんな殺してた。
周りの人が、私を避けてるのも気付かないくらい、ずっと、ずっと剣を振り回してた。」
カイルの拳が握り締められる。
アキは何も言わないままだった。
「・・・・・わらってた。
ガルフは二人の頭を撫でて、わらってた。
二人も笑ってたし、周りの人も、みんな楽しそうに笑ってた。
私と同じ所に立ってるのに、私は全然楽しくなかった。退屈で、誰も相手にしてくれなくて、ずっと一人なんだ。
それが、無性に腹が立ったんだ、きっと」
ちらりと蝋燭が揺れた。
白い蝋が、ゆっくり流れる。
「気付いたら、三人が入って行った船のなかに乗り込んでて、探してたの。
大きい背中の、長身で、色黒な男の人。
見つけた。
ここの、この船長室に居た。アキとシーザは一緒に居なくて、何だ残念、そう思ってた。
男は私に気付いた。きっと、どこかの子供が間違って入って来たんだ、程度にしか思ってなかったと思う。
優しく、笑ってくれた。色々聞かれて、頭を撫でてくれた」
がたがたと、カイルの体が小刻みに震えだした。
俯いたまま、カイルは続ける。

