海上船内物語



「・・・・・・それがどうした?」


暗く狭い、隠し部屋の室内に入るカイル。


「〝死神船船長、ガルフ・イティンジャー

ベイズラリア船長、アラン・ベレナイシーが討つ〟

そう書いてある。」

「あぁ。それはお前も知っているだろう?今更何だ?」


少し、アキが顔を歪める。

それと同じように、カイルの笑顔は消え去った。


「ねぇ、おかしいと思ったことはない?

だって、ガルフだよ?
死神船船長が、アキと同等レベルのアランなんかに、簡単に負ける筈があるとおもう?しかも、無傷で?」


血痕をそっと撫でるカイル。

アキはその様子を見下ろし、顔をしかめたままカイルを隠し部屋から引きずり出した。


「・・・・・その口ぶりからだと、何か知っているようだな」


アキは座ったままのカイルを見下ろして、睨みつけた。


「おかしく思っていない訳では無かったんだ。俺に剣を教えた師匠が、こうもあっさり海賊なんかにやられるか?と。

ここに書いてあった血文字を丸呑みにしていいのだろうか?

本当に真実なのだろうか?


そう思っていないわけではなかった」


カイルは無言で立ち上がった。

首を反らしてアキを見上げると、カイルは苦笑した。