「そこにいろ。この船も上げる」

「まだ闘ってるとこもあるのに?」


カイルは手に持っていたはずの剣が無くなったと知り、開放感に手を振りながら、遠くの船を見渡した。


「カイル、良く見ろ」


アキはコートを着直しながら、振り向き際にカイルに言い捨てた。

カイルはアキに言われたとおりに、船の中を見凝らす。


「あ、黒」


海に残っていた船のうち、甲板に立っていたのは黒いコートの集団だった。


死神船のほとんどが、生き残ったのだ。


「ねぇアキ!勝ったのかな、」

「知らん」


ばしと帆を高く張り、アキは船をゆっくりと進ませた。


カイルは空を見上げる。

見上げると容赦なくたたきつける雨粒が、眼球に降り注ぐ。

うぎゃあと声を漏らしながら、カイルは強風に吹き飛ばされないように、しっかりと柵につかまった。


「朝日だ」


真っ黒な空の遠い東の方に、薄っすらと、ほんの薄っすらと朝日が差している。

東の空は晴れている。


「おい、風読み。今日は晴れるか?」


アキは帆をしめる台に凭れ掛かりながら、カイルに無愛想に聞く。

カイルは機嫌よく振り向いた。