そして、海賊と死神船団でごった返す無数の船の中、一番遠くの船から静かな声がカイルの耳を突き破った。


「カイル!!死神船の顔に泥を塗ったら、容赦しないぞ!!」


姿が見えなく、声だけがカイルに響いた。

抱えるようにして持っていたサーベルががちゃりと鳴る。


「・・・・・・容赦しないって、言われても・・・」


船内へと続く扉を閉め、カイルは恐る恐る揺れる船の甲板に立った。


空が黒い。

空と同じくらい黒い海には、灯火の光が映っている。


痛いと感じるほどの雨が体を叩く。

稲妻が遠くで落ちた。


「・・・・・・・っ、・・・・」


カイルは急に、重心を崩し、後ろへ倒れた。

口元を覆われ、拘束されそうになる。


「・・・・こいつだよな?金髪の、女・・・・。」

「あぁ、これがアランさんの娘か・・・・」


カイルは塞がれた口で叫んだつもりだった。


船影に隠されて、顔がよく窺えない。

目を凝らすと、腰に赤い布を巻いている。


(・・・海賊連盟の、やつ・・・・・!!)


「アランさんのところに連れてくぞ」

「頼むから騒ぐなよ、黒髪の奴に気付かれたら元も子もない・・・」


カイルは抑えられた身体で暴れる。

が、右手で持っているサーベルが虚しく鳴くだけだった。