ひゅう、ひゅう、と冷たくなった潮風が吹き抜ける。 辺りはまるで、何かを恐れるように静かになり、静寂に包まれた。 ぞわり、と寒気が襲う。 限りない水平線に、一つの影が見えた。 目を細めないと見えない、小さな影。 全員、息を呑む。 ぞくり、と鳥肌が立つ。 溜め息が聞こえた。 “何か”が翻弄するように始まった、ほんの序章の瞬間。 海は、何も変わらない。