『う、あ・・・・・・・・・・・・』



自分で、自分を恐ろしく感じた。


この手が、彼女の首を絞めたがっている。
彼女を、欲しがっている。


彼女は、街では“女神”と言う名で呼ばれていた。
きっと、そんな名前はただの仇名に過ぎないのだが、彼女はそれを納得させるような、美貌を持っていた。



人とは違う、“女神” は、どんな終わり方をするのだろう。

“女神”を自分の所有物にして、見下ろしてみれば、どんな顔が見れるのだろう。


それが知りたくなった。




そんな“女神”の横顔をずっと見ていた。


晴天の空。
船乗り達が騒ぐ港とは正反対の、静かな堤防。

穏やかな波が打つ。



『・・・・・・・今日は、うみにいっちゃだめだよ』



どくん、と心臓が高鳴った。


今まで見ていた“女神”の横顔は、しっかり自分に向けられていて、その蒼い二つの目がこちらをじっと見る。


暖かな日光が、じり、と体を焼くように熱かった。

風が、ふわりと吹く。



海のような、澄んだ青色の瞳は、哀しげにそう呟いた。



その尋常じゃない美しさに、ぞわりと鳥肌が立ち、そこから一目散に立ち去る。




その夜、突然現れた大嵐は、漁師や海賊、海の近くに居た人間全てを奪っていった。