「『遥斗の遅刻』と書いて『自業自得』と読みます」

翌朝、からっぽの私の隣の席を指差して、北川君がナカちゃんに言っていた。

私は聞こえないふりをして黒板をボーッと見つめていた。

何か言えば、泣いてしまいそうな気がしたから。

「お?早弁ヤローは失恋かぁ?」

教室に入って来た山崎先生は、またふざけて柚木君の席を見て言う。

「失恋くらいで休むほどナイーブじゃないかぁ。はい、柚木、単なる寝坊……と」

出席簿に書き込む先生。

そんな事書いていいんだろうか?

「工藤、あれ弾いてみたか?」

先生は両手を机に乗せると、ピアノを弾く格好をして、私に聞いてきた。

昨日は気持ちがそれどころじゃなくて練習なんかまるでできなかったけど。

とりあえず。

「はい。前に弾いた事がある曲だったので」