「でも、急がないとあんたでもフラれる日が来るかもよ」

ナカちゃんが頬杖つきながらニヤッとして言った。

「今のところは大丈夫かもしれないけど、ライバル出現だし?」

それを聞いて、胸がキュッと握られたみたいに痛くなった。

柚木君、フラれたくない女の子がいるのかな。

好きな人、いるのかな。

北川君はナカちゃんの言葉を聞いて、ペシッと柚木君の腕を叩く。

叩かれた柚木君は

「……おぉ……」

と返事しながら、横向きに座っていた体を黒板に向かって座り直した。

その日1日、いつもの先生と柚木君のやり取りも聞く事はなく。

なんだか大人しい柚木君。

ちょっと違和感。

なんとなく落ち着かない私は、休み時間の度に柚木君に背を向けるようにして通路側を向き、ナカちゃんと話をして過ごした。