ボクは桜、キミは唄う






キーンコーンカーンコーン──





聞こえるのは窓の隙間から入り込む風の音くらいだった音楽室。

たまにバタバタバタッと廊下を駆け抜ける足音がしたりもするけど。

閉めきった音楽室の中に私達がいる事に気づく人はいない。

2人きり。

なぜかピアノの下で、頭をかがめた私達。



そして鳴り響く、チャイムの音。



2年前を思い出した私達は、その場で見つめ合いながら、チャイムの音に重ねて口を開いた。

「私と……」

「俺と……」

真っ青な空に、優しい風が吹く。

太陽の光を浴びて金色に輝く柚木君の髪が、桜の花びらと一緒にフワッと揺れた。