ボクは桜、キミは唄う

そして、学ランの内ポケットから何かを取り出す。

手の平に乗せて差し出されたそれは

「ボタン?」

「第2ね。これだけは絶対に渡したかったから、ここに入れといて正解」

柚木君は、ボタンの入っていた胸ポケットをポンと叩く。

「ありがとう」

「他のボタンは、新が拾っててくれてるはずだから、後で」

全部、私のために残しててくれたの?

あんなに逃げ回って、守ってくれたの?

「約束したからさ」

「じ、じゃあ私も」

あの日の約束を思い出し、リボンをほどく。

そして、それを手の平に乗せて柚木君に差し出した。

けれど。

窓から入り込む風が、フワッとリボンをさらい、ピアノの下へ隠してしまう。

「あっ」

「あっ」

私達は慌てて同時にピアノの下を覗き込んだ。

「あった」

「あんなとこに」

そして、一緒にリボンをつかみ、間近で絡み合う視線。