ボクは桜、キミは唄う

「楓花」

間近で囁く声。

見上げれば見つめ返してくれる。

夢じゃないんだよね?

「長かった……」

柚木君はそう言って、もう一度抱き締めてくれた。

「また辛い思いさせるかもしれないけど、」

そこまで聞いて私は柚木君の言葉をさえぎるように言った。

「私、強くなったから。もう大丈夫」

「俺、多分またたくさん泣かせるようなことしちゃうよ?」

「泣かないよ。泣き虫は卒業したもん」

「泣いてるじゃん」

「こ、これは、違うから」

フッと柚木君が笑みをこぼす。

「私ね、柚木君がくれた時間を無駄にしないように頑張ったよ。

たまには泣いちゃうこともあるかもしれないけど、これから何があっても、ちゃんと逃げないで立ち向かって行けるから」

だから、そばにいさせて。

柚木君は、少し驚いて、それからニッと笑った。