ボクは桜、キミは唄う

「メール、何て送ってくれたの?」

私も同じようにしゃがみ込んで、柚木君と目線を合わせてみる。

「あー、『話がしたい』って、それだけなんだけどさ」

一瞬目をそらした柚木君は、立ててある自分の膝に乗せた腕で、顔の半分を隠しながら

「──忘れないでよ」

すがるように、そう言った。

「全部忘れて、なんて強がったけど。忘れないでよ」

「柚木君……」

これが、北川君の言っていた、表面的な言葉じゃない、本心?

同じだ。

忘れてと言った柚木君も。

忘れないでと言う柚木君も。

同じ目をして、私を見てくれてる。

どうして気づけなかったんだろう。

こんなにも、真っ直ぐに見ていてくれてたのに。

こぼれ落ちた私の涙を、柚木君が指で拭ってくれた。

そして、その手が、今度は私の髪をなでる。

「あの日、本当は全然違うことを言いたくて、待ってたんだ」

──あんなに正直で分かりやすいやつ、いない──

北川君の言葉が、やっとわかった気がした。

だって、こんなにも優しい眼差しを送ってくれる柚木君が、ここにいるんだもん。

髪を撫でたその手が、ゆっくりと私の頭を柚木君の方へ引き寄せる。




「好きだよって、言いたくて」





その言葉は、柚木くんの腕の中で聞いた。