ボクは桜、キミは唄う

弾き終えてそっと鍵盤から指を離した時、

──コンコン

窓を叩く音がした。

振り返ると、桜の木の枝に座りこっちを見ている愛しい人がそこにいる。

「柚木君……」

ニッと笑った柚木君は、私を見つめ何かを言う。

その口は

『見つけた』

と。

私は急いで窓を開けた。

はらはらと、桜の花びらが音楽室に入り込む。

「柚木君、私」

柚木君は立ち上がると、音楽室の窓枠に足をかけた。

その瞬間。

柚木君のポケットから何かがポロポロこぼれ落ちていく。

それは、ボタン、ボタン、ボタン……。

金色に輝く、学ランのボタン達。

「あぁぁぁっ!せっかくここまで守ってきたのにー!」

柚木君は、こぼれ落ちるボタン達に手を伸ばしたけど、間に合わなくて。

「拾うなよ!触るなよ!持ってくなよー!」

下で驚いている人達に向かって叫ぶ。

「あー頼むわ、それ!」

そして、近くにいた北川君とナカちゃんに、ボタン達の保護を依頼。

「しょうがねーなー」

2人がクスクスと笑いながらホダンを広い集めてくれてる。



『中学卒業する時は、学ランのボタンは全部楓花にあげるよ』

『あ、シャツのボタンもいる?』

『袖のも、いる?あれ?違う?』



もしかして、北川君の言っていた、ポケットに入ってるいいものって……。