ボクは桜、キミは唄う

「柚木君には、楓花ちゃんしかいないんだね」

アキちゃんの声に、ナオちゃんは何度もうなずいて、私の手をギュッと握ると、震える声でごめんねと謝る。

「楓花、行くよ」

ナカちゃんは私の手を取ると、突然走り出した。

でも、多分今はどこかで田辺さんからの告白を受けてるはず。

「ナカちゃん、もう少し時間おいてからの方が……」

「そんなこと言ってたら、またすれ違って取り返しつかなくなるよ!」

「で、でもどこに行ったかわかんないし」

「人気のなさそうなとこでしょ?心当たり探せばすぐ見つかる!あ、柚木どこ?」

ナカちゃんは、トイレから出てきた北川君を見つけると、その背中に向かって叫んだ。