ボクは桜、キミは唄う

同じ日に同じように、柚木君は私を待っていてくれた?

胸の鼓動が速まるのがわかった。

「ちゃんと言いな。それでどうしたの?」

ナカちゃんが苛立ちながら聞いた。

「少ししたら帰るかなって思ってたんだけど、教室で時間潰してからまた靴箱に行ったら、柚木君まだ待っていて。廊下からコッソリ覗いて柚木君が帰るのを待ってたんだけど、全然動かなくて」

ずっと?

あの日、柚木君もずっと待っていてくれたの?

「ずっとずっと、楓花ちゃんを待ってた」

ナオちゃんはそこで、わーっと泣き崩れてしまった。

「ナオちゃん」

私はそんなナオちゃんを責める事なんかできなかった。

私だって、ナオちゃんに笑いかける柚木君に嫉妬したもん。

振られるナオちゃんに、ほっとしたもん。

私にだって、醜い気持ちがいっぱいあった。

「ナオちゃん、いいんだよ」

私はナオちゃんの背中をさすった。

「違うの。それだけじゃない。私、最低な事した」

ナオちゃんはひっくひっくしながらも言葉を続ける。