ボクは桜、キミは唄う

「帰っちゃうの?」

アキちゃんと彼氏も2階から下りてくる。

「悪いね~。たまには釣った魚に餌やんなきゃと思って」

北川くんはそう言って、ナカちゃんの手を握った。

「誕生日くらい、二人で過ごさせて」

「知ってたの?」

ナカちゃんは、北川君が誕生日を知らないと思ってたみたい。

「は?知らないわけなくね?」

「だって……」

「いーから、行くぞ」

「どこに?ってか、楓花、結局どうするの?」

北川君に引っ張られながら、やっぱり私の心配してくれる、優しいナカちゃん。

たまには自分の幸せだけ考えて過ごしてほしい。

「私は、大丈夫!」

私は、ナカちゃんを安心させるために思いきり笑顔を作って、親指を立ててみる。

「ほら、行くぞ」

「え?え、ちょ、ちょっと。ごめん楓花!また連絡するから」

私のばいばいが伝わる前にナカちゃんは引きずられるようにして北川君と帰っていった。