ボクは桜、キミは唄う

「えー、ここ特等席なんだもん。先生、大目に見てよ」

「ん?どれどれ?おぉ、いいな、ここ。けどだめー」

「けち!」

「だって、俺今怒られたばっかりだもん。またここで大目に見たら説教部屋から出れなくなっちゃうじゃん」

まるで子供みたいな先生はナカちゃんと言い合ってる。

「はい、外、外」

でもなぜか先生は私だけを引っ張って歩き出した。

「あれ?私だけ?」

「君のいる場所はここじゃないからなぁ。他に生徒はいないな~。俺は工藤しか見つけてないぞー」

どうやら先生はナカちゃんと北川君を二人きりにさせてあげたいみたい。

「ぷぷ。先生、また怒られちゃうかもしれないですよ?」

「うん。でも、青春だからな」

先生はニカッと爽やかに笑った。

「楓花!」

先生に従い、外へ向かって歩き出した時、ナカちゃんが私を慌てて呼び止めた。

「さっき、柚木言ってたのって」

あ、そうだ。まだ聞いてなかった。

振り返ると、ナカちゃんは思いもかけない事を口にした。