ボクは桜、キミは唄う

「あー、ここいいね。花火見やすいじゃん」

「でしょ?特等席」

「柚木と見なくていいの?」

ナカちゃんは突然そんな事を言い出す。

「へへぇ?どうしたの?急に」

「ん?さっきのさ、あの柚木の顔、なんか私久々に感動したからさ」

そうだ。

「そう言えばさっき、柚木君何か言ってたの?私、考え事してて聞いてなくて」

「えぇぇ?聞いてなかった?」

ナカちゃんは呆れすぎて顎が外れる勢いで、私を見た。

「うん。聞いてない」

そんなすごい事を言ってたのかな?

「もう、本当大事なとこ抜けてるんだから」

ナカちゃんはさらに大きくため息をつく。

「だって……」

「あの後、柚木がやっと本当の事を……」

と、話し始めた時

「おぉ、お前ら何やってる?全員外で見る事になってんだぞ」

もう解放されたのか、山崎先生と北川君が廊下の端からこっちに向かって歩いてきた。