ボクは桜、キミは唄う

私はコッソリその場を抜け出した。

しばらくのんびり廊下を歩いていると、花火の音が響いて来た。

近くにあった窓から外を眺めると、始まった打ち上げ花火が、そこから綺麗に見える。

「あ、意外にここ特等席かも」

この空の下で、柚木君も同じ花火を見ているのかな。

お腹に響く低い音と共に、空に浮かび上がるたくさんの花。

綺麗。

「楓花」

しばらく1人で花火を楽しんでいると、後ろからナカちゃんの声が聞こえてきた。

「ナカちゃん?あれ?北川君は?」

「知らない」

「また喧嘩?」

「うそ。大丈夫。さっき叫んだのが良くなかったみたいで、教育指導の先生に連れてかれちゃったんだ。ちなみに山崎も同罪で」

「山崎先生も?」

「そうそう。メガホンなんか渡すから。ぶぶっ」

「くくっ。そうだった」

三浦先生を止めてまで北川君の味方しちゃったんだもんね。

「あれは青春だって、二人で叫んでたよ」

「くくくっ。おかしー」