ボクは桜、キミは唄う

私は最低だ。

友達が振られているのに、どこかでホッとしてる。

そんな自分に気づいたら、罪悪感でいっぱいになった。

「私、やっぱりもう行くよ」

その場から逃げようとした時、北川君が

「待った。もう少し」

私を引き止めた。

そこで終わるかと思われていた告白は、ナオちゃんの必死な食い付きでまだ続いていた。

「いつ、問題は解決するの?私は何年でも待つ自信あるよ?」

あまりのなおちゃんの必死さに苦笑いした柚木君は

「今はさ、とりあえず受験も控えてるし」

別の理由も取り上げる。

「目指したい高校あるからさ、勉強頑張って、高校行ってもっと陸上頑張りたいなーってことしか考えてないんだ」

「柚木君、Y高志望じゃないの?去年から家庭教師つけてるとか聞いたし、でも今のランクならそんなに頑張らなくても……」

「あー、まぁ、何があるかわかんないし?結構バカだからさ俺」

「去年の期末テスト、10位以内に入ってたよ?」

「あれは地理だけだし。まぐれだよ、へへ。

でもさ、結局、今は自分の事で精一杯なとこあるんだよね。今は、今しかできないこと、精一杯やりたいなって。

だから、ごめん。付き合う前提とか、友達からとか、曖昧な形で、誰かを繋ぎ止めるような事は出来ない」

「じゃあ、受験終わって落ち着いたら」

もう断りきれなくなったのか、柚木君はそこで瞳をキョロンと回し、黙ってしまった。

「すげーな」

北川君が呆れたように笑う。

「ナオは本気だもん」

アキちゃんがナオちゃんを見つめながら言った。