ボクは桜、キミは唄う

柚木君は驚いて振り返る。

「柚木君、私、話が……」

私はナカちゃんとアキちゃんの手を掴むと、急いで駆け出した。

柚木君の隣を駆け抜ける。

私達の送った風で、柚木君の前髪がふわっと揺れた。

「ちょっと楓花、いいの?」

ナカちゃんが後ろを振り返りながら聞く。

「え?あれ?告白タイム?」

私達に続いて来た北川君が後ろから面白そうに言った。

「あんたはふざけないの!」

ナカちゃんが北川君を怒る。

「ちょっと待った。気になんねー?」

でも北川君は少しも動じずに、私達をまとめて捕まえると、

「こっち」

と言って、エレベーターの手前へ連れて行った。

顔を出せば、柚木君達がよく見える。

「盗み聞き!?」

アキちゃんが驚いた。