ボクは桜、キミは唄う

「私」

突然、ナオちゃんが決心したように真剣な顔をして口を開いた。

「やっぱり、告白する」

ナオちゃんの視線は柚木君に真っしぐら。

「ナオ、焦る事ないんじゃない?」

アキちゃんはそれとなく止めているようだったけど、

「せっかくの旅行だよ?花火大会だよ?好きな人と一緒にいたいよ。多少強引でも、柚木君を狙ってる子はたくさんいるんだもん。頑張らないと私なんて名前すら覚えてもらえない」

ナオちゃんの必死さに負けてしまっていた。

「ふられたら、友達としてでもいい。名前覚えてもらって、もっと話がしたい」

ナオちゃんの気持ちが痛いほどにわかる。

「……いい?」

だから、ナオちゃんの確認する声に、静かに目を伏せた。

好きっていう気持ちは、誰にも止めることなんかできないんだもん。

意を決したナオちゃんは

「柚木君!」

北川君と前を歩く柚木君の名前を大声で呼んだ。