ボクは桜、キミは唄う

「お前の方がうっさいんじゃボケ!」

「うっさい奴にうっさい言われたくないわこのオタンコなす!」

「いいか、お前、もう逃げるんじゃねーぞ!そこ動くなよ!動いたらぶっ殺す!」

北川君はメガホンをご丁寧に山崎先生に返すと、ペコリとお礼をして、走り出した。

「ナカちゃん、北川君、こっちに来るつもりじゃない?」

「う……ん。どうしよう」

ナカちゃんの手がカタカタ震えてた。

「どうしよう……」

でも、考える間もなく、北川君はダッシュでこの部屋に到着してしまったらしい。

コンコンコンコンコンコンッ

むやみに扉を叩き続けるこの音は、北川君としか考えられない。

一部始終を見ていたアキちゃんが ドアの鍵を開けた。

「はぁ、はぁ」

息を切らせた北川君が、真っ直ぐナカちゃんを見つめる。

「ナカちゃん、ガンバれ」

私は1度だけ、ぎゅっとナカちゃんの手を握ると、アキちゃんやナオちゃんと一緒に部屋を出た。

北川君は私達と入れ違いで、ナカちゃんに向かって歩いて行く。