ボクは桜、キミは唄う

「じゃあさ、柚木君、私と一緒に見よう?」

ナオちゃんは柚木君のジャージの袖口を引っ張って言った。

柚木君とナオちゃん……。

今まで想像した事なかったけど、ナオちゃんに限らず、いつかこんな日が来ても不思議じゃなかったんだ。

柚木君が、私以外の女の子と肩を並べて歩く。

今まで、そういう事がなかった方が不思議なくらい。

でも……。

見たくない。

「私、お腹痛い……かも。だから、花火大会行けないかな?なんて……」

あーやっぱり嘘が苦手な私の演技はひどいものだ。

みんなが、『いや、ピンピンしてるでしょ?』って顔で私を見ていた。

「じゃあ、部屋まで送るよ」

佐々木君が立ち上がる。

いや、困る!

「だ、だ、大丈夫だよ?部屋くらい1人で行けるから」

「遠慮しなくていいから」

佐々木君は顔に似合わず強引で、腕の力も強い。

拒む私の腕を掴むと簡単に引っ張り、部屋を出た。