ボクは桜、キミは唄う

「何で手繋いでるの?」

ナオちゃんがふと、私の手を見て、口を尖らせた。

「え?あっ」

ナカちゃんの事で頭がいっぱいで、言われるまで気づかなかった。

私を止めた柚木君が、ずっと私の手を握っていたんだ。

「ご、ご、ご、ごめん!なさい!」

慌てて、柚木君の手を振りほどく。

トクントクントクントクン。

心臓の音が柚木君に聞こえちゃう。

「あ、わ、私、に、荷物整理しに行かなきゃっ」

整理するものなんかもうないけど、ナカちゃんも北川君もいない部屋で、1人でこの状況を乗り切る強さはまだない。

立ち上がった時、佐々木君が、

「8時から花火大会だよね?ロビーで集合した後、迎えに行くから、工藤さん一緒に見よう」

なんて言い出した。

「え?」

かたまる私に、アキちゃんの彼氏が今度は私達に向けて

「ピュー」

と口笛を吹く。