ボクは桜、キミは唄う

「じゃあ、約束通り、勉強する?」

「うん」

「あ、その前に、ガリガリ君、食う?買ってあるんだ」

「あ、うん」

立ち上がった柚木君は、また振り返って

「なんか飲む?」

と聞く。

「私、手伝うよ」

ガリガリ君も買わせちゃったし、家にお邪魔させてもらって、飲み物まで準備させるわけにいかないと、私も立ち上がった。

けど、忘れてた。

「あ、足が──」

グラッとバランスを崩した時

「っっ楓花」

抱き止めたのは、柚木君。

そしてその腕の温もりを感じて、やっと、さっきなんて大胆なことをしてしまったんだろうと気づく。

私から抱きついちゃったんだ。

そして今も。1日に2度も。

「ご、ごごごごめんなさい」

急激に顔が熱くなる。

「大丈夫だから、楓花は座ってて」

でも、平気そうな柚木君は、ポンと私を床に座らせるとまたすぐに部屋を出ていこうとする。

私ばっかりが意識してるみたいで恥ずかしい。

けど、気づいてしまった。

部屋から出ていく柚木君の耳が真っ赤だった事に。