ボクは桜、キミは唄う

「怒ってたけど……けど、楓花と話せない日は、つまんなすぎる」

柚木君は湿布を貼り終えると、私の顔を見て言った。

「ごめん。俺、楓花のことになると、全然余裕なくなる」

その顔があまりにも寂しそうで。

苦しくなった私は思わず柚木君の首に手を回し、抱きついてしまった。

「楓……?」

「ごめんね。脩君とはもう話さないって自分から言ったのに」

「楓花?泣いてる?」

「もぉ、柚木君と話せないかと思った。嫌われたと思った。マネージャーのとこ行っちゃったと思った」

「楓花……」

「もう、ダメかと思った」

「それは、俺のセリフだろ」

柚木君は少しだけ体を離して、私の顔を覗き込むとオデコをコツンとぶつけてから、今度は柚木君からぎゅっと私を抱きしめてくれた。