ボクは桜、キミは唄う

私は痛い足をひきずりながら、無我夢中で柚木君の家に向かって走った。

走れているかどうかは微妙だったけど。

脩君は何も言わず、追いかけても来なかった。



「なんで?家に行こうって言ったのははる君なのに」

「ごめん。やっぱ、無理」

柚木君の家のすぐそばの曲がり角まで来ると、柚木君とマネージャーの話し声が聞こえてきた。

「じゃあ、うち来る?あのね、クッキー焼こうと思ってて……」

「ごめん」

「あ、そうだ、はる君が欲しいって言ってたDVDあるの。この間見つけてね、それで」

マネージャーが柚木君を引っ張ってこっちに近づいて来た。

慌てて隠れ場所を探したけど、見当たらない。

どうしよう?と思った時。

「楓花……」

柚木君が私を呼んだ。