ボクは桜、キミは唄う

「ゆ、柚木君!柚木君!」

叫んでも私の声は届かない。

追いかけたいのに足が言う事きいてくれない。

「楓ちゃん、とりあえず足危ないからさ、家帰って湿布して……」

脩君は私を気遣って、連れて帰ろうとするけど。

「やだ。脩君、離して」

私は脩君を突き放した。

「楓ちゃん、マネージャーにうつつぬかしてる奴なんか放っとけよ。俺がいるだろ」

脩君は急に真面目な顔をすると私の手を引き、抱き寄せた。

「脩君、やだっ」

「離さない」

「やだ!」

「離さねーよ!俺がどれだけ……」

脩君はさらに抱き寄せる力を強くすると

「俺がどれだけ待ってたかも知らないで。ふざけんな」

悲しそうな声を出した。