ボクは桜、キミは唄う

追いかけなきゃ。

そう思ったとき、北川君が私を止めた。

「頭に血上ってるから、今行っても多分無駄だよ。頭冷やしたらきっとまたいつものアイツに戻ってるから」

「でも……」

「そんで、『俺、超カッコ悪い』って反省するんだわ、きっと。ガハハハ」

「そー、アイツ、キレると怖いから~」

近くにいた男子も北川君と一緒に笑い出す。




結局、体調不良という理由で保健室に行っていた柚木君は、1時間目の途中で教室に鞄を取りに来て、そのまま早退してしまった。

弁解する余地もなく。

そして、放課後。

私の外靴がなくなっていた。

「もう……やだ」

私は玄関にそのままうずくまってしまった。

悔しくて寂しくて悲しい。

私を憎む人の気持ちが痛いし、柚木君に嫌われたことも悲しいし、なくなった靴をどう探したらいいのかわかんない。

どうやって帰ったらいいんだろ?

この先、何度もこんな事があるのかな。

ツーッと涙がこぼれ落ちた時。

「楓ちゃんごめん、これでしょ?」

私の外靴を持った脩君がやってきた。

「……く……つ?」

脩君は靴を下に置くと、私と同じようにしゃがみ込んで、ポンポンと優しく頭をなでてきた。