【火曜日】



「昨日の話の続きなんだけれどね」

「…資料の貸し出し許可お願いします」

「衝撃だったんですよ」

「……………」

「だってそれ、的を得てたから」

「……え?」

「だって他を凌駕する匂い立つもの、っていえば最強なのは消臭剤だよ。

でも消臭剤は無臭のもあるから、なら残るは芳香剤だよね。

しかもすごく自己主張するとなればルームじゃなくやっぱりトイレです。

俺はトイレの芳香剤なわけですよ」

「…いえ、遠野さんは普通にカッコい…」

「え?そこのところもう少し大きくお願いできる?」

「……貸し出し許可を」



「……………」



「……………」



「…罪なひとだな」


「許可を」

「…で、ね。
自分を見失ってた俺はやっと気付いたんだ。
意味もわからず頑張って手に入れた男としての俺の地位は
トイレの芳香剤だったって」

「……………」

「俺何やってるんだろう。

何がしたかったんだろう。

何になりたかったんだろう。

何が欲しかったんだろう。

一つしっかり解っていることは、

俺はトイレの芳香剤になりたかった訳じゃないってことだ」


「…わ、私はそんなつもりで…」


「ん?何?」


「…か、貸し出し許可ありがとうございました」

「え?あ、ちょっと待っ…」