花達はいつも優しく私を包んでくれる。

『あなたの幸せを祈ってる』

そう
言う様に。





兄と私は街中で花屋を営んでいる。

その店から道を隔てた真向かいにも花屋があり、言わばライバル店という事になるのだが、そこで働く男性の作るブーケのセンスは一流でかなり有名なので売り上げ面はやや負けている。

兄はその腕を欲しがり引き抜き勧誘を続けているが袖にされ続けているらしい。

人気など上がらなくてもうちの店には常連さんがいる。

私はそれで充分だ。

花に囲まれて、人と会話して、そんな平穏で平凡な毎日が、私はすごく好きだ。

それが、私の世界のすべてだった。

そんな折、兄が急用で遠方の配達に行った時。

その兄からブーケの注文が来た。

交際している女性との記念日にプロポーズを企画していた兄は、女心を掴むブーケを持参するつもりだったのだが、渋滞に巻き込まれ帰りが遅くなるので自分で作る事を断念し私に任せてきたのである。

だが、生憎今日は店の定休日で店にある花が少ない。

あるものだけでいい加減なものを作るわけにもいかず、私は兄から受けとった添付メッセージを持って向かいの花屋に依頼する事にした。