思い出博物館

 小さい頃、友達の立派な仕事をしていたり、見た目がお洒落で格好いいお父さんに憧れた。

 けれど、いまはそんなもの取るに足りないものだし、何より父さんを見る目が変わったせいかも知れない。休みの日、だらしない格好をして、お酒を飲みながら野球なんかを見る父さんが実の所、僕は結構好きだ。

 いつか、僕が成人を向かえたなら、一緒に酒を酌み交わせる日が来るのだろうか。成人式には、きっとまた、父さんは上機嫌で僕の話をするに違いない。

 そう考えると、なんだか暖かい気持ちさえ心に芽生えるのだ。

「父さん、かわいそー。息子に忘れられているなんて」

 僕はからかうような口調で言った。

「仲が悪かったんですか?」

「この時はね、顔も見たくないって感じでしたよ。実際、わざと見ないようにして。だからかな、ここに居たの」

 僕の台詞に、店主は不安そうな顔をした。それに僕は慌てて笑顔を向けた。

「でも、和解しましたから安心してください」


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