高野は、俺の前の椅子に座った。
「うちの家…両親があんま帰ってこないの」
帰ってこないか…。
いないんじゃないじゃん。
「まぁ、もうすぐ2年だけどっ」
「はっ?!」
それ…帰ってこないっつーより…
「見捨てられてる、って思う…?」
「いや…」
「いいの。あたしも…そう、思うときあるし」
高野が、切なそうに苦笑いする。
「2年も帰ってこないなんて、おかしいよね。
あたしの妹と弟、胡桃の実っていうの。二人は…もういないって思ってるんだよね。
一緒に過ごした時間は、あたしよりずっと少ないし…顔も覚えてないと思う。
でもね…あたしは、信じてるんだ。
いつか…いつか、帰ってくるんじゃないかって」
いつものように笑う、高野。
そんな高野が…
自分よりずっと…
強く、見えたんだ。

